研究分野
Research Fields
当研究室はネットワークの研究を主に行っております.
インターネットのような物理的に存在するネットワークから,人間関係ネットワークやニューラルネットワークなどのモデルとして扱う論理的なネットワークまで,幅広く扱っております.
ここでは当研究室で行われている研究分野やテーマをご紹介します.
コンピュータネットワーク
Internet Architecture
インターネットの通信は,多くのプロトコル (通信規約) に基づいてデータの送受信を行います.プロトコルは階層構造の仕組みになっているため,インターネットのプロトコルの一部を置き換えたり,新規に追加することが容易な設計になっています.
インターネットは,狭義の意味ではネットワーク層にInternet Protocol (IP) を使用したネットワークであり,Webやメールなどの一般的なプロトコルもIPを利用したプロトコルとして定義されています.
IPには現在主流のIP version 4 (IPv4) と,近年普及してきたIP version 6 (IPv6) の2種類があり,この2つのバージョンのプロトコル間には互換性がありません.
当研究室では2つのIPの互換性や共存を目指した研究や,それぞれのIPをベースにした上位の新たなプロトコルの開発・改良の研究を行っております.
近年では信頼性の確保のためのプロトコルとしてTransmission Control Protocol (TCP) の代わりにQUICを使用する方式が注目を浴びています.QUICはYoutubeなどの大手のウェブサイトで積極的に使用されており,現在は次世代ウェブ通信用プロトコルであるHTTPバージョン3用のプロトコルとなっておりますが,当研究室ではQUICを利用した新しいアプリケーションプロトコルや,IPに変わるコンテンツ指向のプロトコルの上位プロトコルへQUICを使用する研究などを進めております.また,当研究室ではTCPとQUICの共存についての研究も進めております.
MANET
MANET(Mobile Ad-hoc NETwork) は,移動端末間をP2Pで接続して作成されるネットワークです.災害時等の通信インフラが使用できない地域,宇宙や深海などの未開拓地での臨時ネットワーク等の利用が期待されています.近年では,5G利用における通信帯域緩和目的での利用や,自動車間通信 (VANET),飛行物体間 (FANET)での利用の研究も行われています.
当研究室ではMANET上での通信の仕組みや,MANETを用いて集めた周辺の情報を用いた避難誘導システム,自動運転経路提示システムなどの応用アプリケーションの研究を行っております.
2024年からは東京理科大学マルチハザード都市防災拠点の研究に協力し,被災地支援のため,MANETと機械学習の技術を用いて,ドローンの自律制御,災害直後の現場把握,通信インフラ形成の研究を行っています.
# 共同研究ページもご覧ください.
Routing
インターネットを構成する大きな要素として,データを配送するルーティングの技術があります.現在のインターネットの通信の多くは,アドレスと呼ばれる識別子をデータに付与し,そのラベルを元にバケツリレーの方式でデータを配送します.
様々な経路が存在するネットワークではリレーする相手を上手に選ぶことで混雑を防いだり,短時間で到着することが可能になります.
当研究室では多対多の通信のデータ配送方式,MANETなどの動的かつ臨時ネットワークでの配送方式,コンテンツや情報指向ネットワークでの配送方式など,データを配送する仕組みの研究を行っております.
Security / Reliability
インターネットはベストエフォート型のネットワークに位置付けされます.ベストエフォート型のネットワークとは,「可能な限り」速く,正確にデータを届けようとする通信網のため,データには欠落・誤りが発生する場合があります.
実際のアプリケーションでは,電子メールのような送受信データに誤りが許されない通信を前提にしたものが数多くあります.インターネットでは,誤りや欠落を許さないために,欠落や誤りデータを検知する機構,検知した場合に再送・修正する技術を用いることで信頼性を確保しております.
また,データ配送はバケツリレー式で行われるため,途中の経路で第3者による不正な閲覧・改竄が行われる可能性があります.そのためインターネットでは暗号や署名と呼ばれる技術を用いて安全性を実現しております.
当研究室では,多様化するニーズに対応した安全性や信頼性の実現のため,暗号や誤り訂正技術,不正アクセス検知やファイアウォール,ブロックチェーンなどの分散台帳の研究を行っております.
機械学習・深層学習
Explainable AI
近年のAIブームを支える技術として,深層学習と呼ばれる多層ニューラルネットワークを用いた技術があります.深層学習は人間には到底把握しきれない微細な相関や因果関係を学習し,異なるデータでも高い精度で分類する技術で,現在では様々な分野の人工知能として活用されています.
当研究室では深層学習が何を学び,何を重視し,どのように判断を下しているのかを知る (説明可能AI:Explainable AIといいます) ために,Vector Quantization (VQ) を用いて画像解釈可能性を向上させる研究や,自然言語を対象にしたWT5と呼ばれる根拠も学習に組み込むモデルを活用した解釈の研究を行っております.
また解釈可能性を高めることによって深層学習全体の精度を高める研究も行っております.
Autonomous Agent
深層学習の応用として自律型エージェント (Autonomous agent) としての行動決定があります.この技術はゲームのコンピュータの思考や,自動運転・自動操縦などの意思決定,それらを行うためのさまざまな予測などにおいて,現在では多くの分野で成果をあげております.
当研究室では,ボードゲーム,テーブルゲーム,コンピュータゲームなどのエージェントの開発や,自動運転への応用研究,自動判定などの研究を行っております.
近年では機械学習による判定・予測・分析などを用いて日本統計学会主催のスポーツデータ解析コンペティションにおいて,当研究室の学生メインのチームが数多く受賞しております.
コンペティションの詳細は共同研究のページをご覧ください.
Media Generation and Processing
深層学習は分類問題を解くだけでなく,GAN (Generative Adversarial Network) のようなモデルを用いることにより画像等を生成できるようになりました.
近年では人間が生成したものとシステムが生成したものの区別が難しいほど精度が高いモデルやシステムも多く登場してきています.
当研究室では,開発したシステムによる3Dモデルや画像の自動生成,加工などの研究を行っております.
情報推薦・自然言語処理
Natural Language Processing
プログラム言語での記述や通信プロトコルと異なり,人間の使用する言語 (自然言語) は非常にあいまいで複雑なルールで成り立っています.(ルールで定義できないケースもあります.)
この難解な自然言語をコンピュータで処理するための研究分野が自然言語処理 (Natural language processing : NLP) であり,多くの研究者がNLPの研究に携わってきました.
当研究室では,TransformerやBERTなどの近年登場した技術や古くからのルールベースの手法などを織り交ぜて,翻訳生成,質問文や解答生成,カウンセリングなどの対話を行う研究 (自然言語生成) や,自然言語を解釈 (自然言語理解) して,話者の感情を推定するシステムなどの研究を行っております.
2021年度には,当研究室開発のなぞかけ生成システム「AIっち」となぞかけ本家のねづっち氏の競演イベントが行われました.開発者の大原さんは,AIっちの研究で情報処理学会第81回全国大会にて学生奨励賞を受賞しました.
2023年度よりAXテックケア株式会社様と日本語かな漢字変換システムの共同研究をはじめました.詳しくは共同研究の頁を参照ください.
Information Recommendation
情報やデータをコンピュータで処理してユーザに最適なコンテンツやアイテム,人などを推薦する技術を情報推薦技術といいます.
近年ではamazonなどのECサイトやマッチングシステム,ターゲティング広告などにも用いられ,多くの人にとって身近な分野となってきました.
当研究室では,アイテムベースやユーザベースの協調フィルタリングといった古い手法から近年の機械学習ベースの手法までを活用した応用研究や,自然言語を用いた新たな推薦システムの開発,グラフ理論を用いた推薦システムの研究などを行っております.
2020年度には,当研究室の学生2名が中心となって開発した自然言語処理を用いたカフェ推薦システムが経営科学系研究部会連合協議会主催のデータ解析コンペティション(OR部門)で受賞(敢闘賞)しました.
上記以外のテーマも扱っております.外部発表された文献リストは以下をご覧ください.